1. 「求人を出せば応募が来る」時代の終わり
採用担当者であれば、「求人媒体に出稿しても、以前ほど応募が集まらない」という感覚を持っている方は少なくないのではないでしょうか。
これは一時的な景気変動ではなく、実は構造的な変化によるものです。
日本では2026年前後から生産年齢人口の減少がさらに加速する、いわゆる「2026年問題」が本格化するとされています。労働力の絶対数が減っていく中で、企業間の人材獲得競争は今後も激化していく見通しです。実際、従業員300名未満の中小企業では有効求人倍率が5.28倍という水準に達しているというデータもあり、「募集をかければ人が集まる」という前提そのものが崩れつつあります。
とりわけ熊本県内では、この変化がより切実な形で表れています。
2025年度の熊本県最低賃金は82円(8.6%)の引き上げとなり、引き上げ額・上昇率ともに全国1位を記録しました。さらにTSMC(JASM)の熊本進出により、地場企業がこれまで維持してきた賃金水準そのものが塗り替えられつつあります。全国的な人材獲得競争の激化に、熊本県ならではの事情が重なり、「候補者集めの前提」が急速に変化していると言えるでしょう。
まずはこの前提を採用担当者間で共有した上で、候補者集めをどう立て直すかを考える必要があります。
2. 候補者集めが停滞する二つの構造要因
候補者集めがうまくいかない要因は、大きく二つに整理できます。
一つ目は、知名度・認知不足です。
中小企業の73%が「知名度不足により優秀な人材にアプローチできない」と回答しているというデータもあり、待遇や労働条件以前に「そもそも存在を知られていない」ことが応募数を絞っている大きな要因になっています。求職者は自分が知らない企業を検討の土台にすら乗せられません。
二つ目は、ターゲティングと訴求メッセージの精度不足です。
「どんな人材に来てほしいのか」の言語化が曖昧なまま募集を出すと、メッセージが誰にも刺さらず、数を集めても質が伴わない、あるいは質を求めすぎて数が集まらないというジレンマに陥ります。
候補者集めの土台は、媒体選びや予算配分以前に、この二点の解像度にあります。
3. 「待ちの採用」の限界と、「攻めの採用」への転換
従来型の求人広告や人材紹介は、企業側が求人情報を出し、応募や紹介を「待つ」形の採用手法です。
労働力人口が豊富だった時代はこれで十分機能していましたが、求人倍率が高止まりする現在の環境では、待っているだけでは母数そのものが確保できません。
特に中小企業では、大企業と同じ土俵で「待ちの採用」を続けても、知名度や採用予算の差でどうしても不利になります。候補者集めの手法そのものを見直すタイミングに来ていると言えます。
熊本県内の企業にとっては、この課題はさらに切実です。TSMC関連企業との人材獲得競争を背景に、建設業をはじめとする一部業種では人件費の伸び率が前年比6.1%増と全国トップ水準に達しているというデータもあり、「待ちの採用」のままでは太刀打ちできない状況が現実に生まれています。
そこで注目されているのが、企業側が主体的に候補者へアプローチする「攻めの採用」です。代表的な手法は次の三つです。
①ダイレクトリクルーティング
企業自らが求職者データベースなどを通じて直接スカウトする手法です。アプローチの主導権が企業側にあるため、求める人材要件や選考基準を自由に設計できるのが強みです。一方で、候補者を探し出す工数は相応にかかります。
②リファーラル採用
既存社員や内定者から候補者を紹介してもらう手法です。社内の雰囲気や求める人物像を理解している社員が紹介することで、マッチング率や内定承諾率の向上が期待できます。制度として仕組み化できるかどうかが定着の鍵になります。
③採用ブランディング・SNS活用
企業の認知度や親近感を高めることで、候補者集めの土台そのものを底上げする手法です。即効性は他の二つに比べて低いものの、中長期的な知名度不足の解消には欠かせません。
これら三つを同時に始めるのは現実的ではありません。自社のフェーズやリソースを踏まえて優先順位をつけ、まずは一つに絞って着手することが、攻めの採用を機能させる現実的な進め方です。
4. 「量」だけでなく「質」と「歩留まり」を守る
候補者集めというと応募数を増やすことに意識が向きがちですが、集めた候補者をどれだけ歩留まりさせられるかも同じくらい重要です。
現在の求職者は複数の企業を同時に比較検討しているケースがほとんどです。連絡の遅れや説明不足は、それだけで離脱・辞退につながります。問い合わせや応募への初動対応を24時間以内に行う、選考プロセスの説明を候補者ごとにばらつかせないといった、地道な運用の質が候補者集めの成果を左右します。
つまり候補者集めとは、「集める」活動だけでなく、「集めた候補者を逃さない」運用まで含めて設計すべきテーマだと言えます。
5. 採用の悩みは、一人で抱え込まなくていい
ここまで見てきたように、候補者集めがうまくいかない背景には、知名度不足やターゲティングの精度、待ちの採用から攻めの採用への転換、そして初動対応の質といった、複数の要因が絡み合っています。加えて熊本県内の企業にとっては、最低賃金の急上昇やTSMC関連の人材獲得競争という地域特有の事情も重なっており、すべてを自社の採用担当者だけで整理し、実行に移すのは決して簡単なことではありません。
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