コラム

Column

『ザ・ゴール』プレミア試写会のセミナーレビュー 

はじめに

今回は「ザ・ゴール」プレミア試写会について記事にしていこうと思います。「ザ・ゴール」について1984年に出版されたビジネス小説になります。全世界で1000万以上が読んでおり、Amazon創設者のジェフ・ベゾズも経営陣に必ず読むように推薦している書籍になります。国内では2001年に発売されて、累計125万部突破しています。次世代リーダーが目指すべき「真の生産者とはなにか」、国内のトップランナーたちも大絶賛している企業のボトルネックを通してTOC(制約理論)について記載した書籍になります。

 

本日のテーマ

生産性とはどういう意味か

企業の目標(ザ・ゴール)は何か

企業の目標を測定する3つの指標は何か

つながりとばらつきの組み合わせの意味は

ボトルネックについて

ドラム・バッファー・ロープとは

ボトルネックを解消するための5つのステップ

 

生産性とはどういう意味か

今回のプレミア試写会では工場を題材にして描かれていました。主人公はある工場の工場長になります。本部長がある日突然やってきて、赤字の工場をあと3ヵ月で黒字にしないと工場を閉鎖するという話から始まります。本部長は「効率」が悪いと工場長に指摘します。工場には最新ロボットも導入しており、優秀な社員も雇っています。それなのに納期遅れが相次いでいます。実際、工場に最新ロボットを導入したことで一部の部署では36%も生産性が上がったと数字では出ています。しかし、人件費は減っていない、出荷量も増えていなく、在庫が増える一方です。工場長は悩んで有名な大学教授に相談します。工場長は、教授に今までの経緯を説明した際に「生産性」とはどういう意味か?と尋ねられます。工場長は弊社では「従業員1人当たりの付加価値=生産性」と答えますが、そんなの生産性ではないと一蹴されます。教授は「生産性とは目標(ザ・ゴール)に向かって何かを達成したということだ」と言います。つまり生産性とは目標に向かって会社を近づける行為そのものであり、その反対に目標から遠ざかる行為はすべて非生産的となります。生産性は目標がはっきり分かっていなければ意味がありません。教授は「どんな会社であっても目標は1つだ」と工場長に伝えます。さてこの目標とは一体なんでしょう?

 

企業の目標(ザ・ゴール)は何か?

工場長は「効率よく製品を作ること」「マーケットシェアについて」など様々な考えを巡らせる中、1つの答えに辿り着きます。会社の目標(ザ・ゴール)とは「お金を儲けること」、単純ではありますがそのシンプルな目標にやっと気付きました。今までは、「効率よく製品を作ること」など手段にばかり目がいっていました。そこで会社が儲かっているか分かる指標は何か経理部長に尋ねます。経理部長は、「純利益」「投資収益率」「キャッシュフロー」のこの3つを増やせば儲かると説明しますが、ここで工場の作業員から指摘が入ります。「現場では作業時間や出荷オーダ数などが重要な数字ですが、その数字の何がどう変われば儲かるかが分からない」そこで工場長は、本社で使う指標は現場レベルでは使いにくいため重要な情報が見えてこない、新しい指標を作る必要があると気付きます。さてこの新しい指標とはなんでしょうか?

 

企業の目標を測定する3つの指標はなにか

工場長は教授に相談します、そこで教授から3つの新たな指標について教えてもらいます。

・スループット

販売を通じてお金を作り出す割合のこと。注意するべきポイントは生産しても売れなければスループットではないということ

・在庫

販売しようとするものを購入するために投資したすべてのお金のこと

・業務費用

在庫をスループットに換えるために費やすお金のこと

工場長は教えてもらった指標を工場に照らし合わせてみます。

ロボットを導入して製品がより多く売れたかどうか
⇒「スループット」が増えたかどうか

従業員を減らせたかどうか
⇒「業務費用」を減らせたかどうか

仕掛かりなどの在庫が減ったかどうか
⇒「在庫」は減ったどうか

照らし合わせて見た結果、ロボットを導入しても売上は上がっていませんでした。また、ロボットの効率を上げるために在庫の投入量を増加したため、ロボットに頼る作業はたくさん部品が作られるようになったが、その部品だけ増えても他の部品が足りず、在庫が増えてコストが上がっていることが見えてきました。

 

つながりとばらつきの組み合わせの意味

工場長は再度教授に相談します。ここで教授は面白いことを言います。「従業員が手を休めることなく常に作業している工場は非常に非効率なんだ」、ここで工場のバランスについて話します。会社が儲けを生み出すためには、余計な出費をせず、しかし余力も残さないバランスをとる必要があります。バランスのとれた理想の工場とは、製品を作り出す「生産能力」と、「市場の需要」が完璧に合っている状態の工場です。バランスが取れた工場では、市場の需要に生産能力が足りず機会損失が生まれたり、逆に生産能力に余剰ができ、機械や労働者に対して不必要なお金がかかるということもありません。しかし、教授は完全にバランスのとれた理想の工場は存在しないと言います。それどころか、 理想の工場であればあるほど「倒産」してしまう恐れがあると言うのです。どういうことか?普通、需要に合わせた生産を目指すとき、減らすことができる能力を減らし、使われていないリソースがなくなるようにしてバランスを取ろうとします。たとえば需要に100%合わせるために、人を減らし人件費を削る時。この場合、お金を作り出す「スループット」も減ってしまい、「在庫」が増えることが実証できると言います。さらには、在庫の維持コストが上昇することで、人件費削減によって目指した「業務費用」の削減すら達成できなくなる恐れがあると言うのです。

この現象を理解するには「依存的事象(つながり)」と「統計的変動(ばらつき)」の組み合わせについて知っておかなければなりません。

依存的事象

依存関係とは、複数の作業の前後関係が生み出します。 具体例を出すと、ある工場が1つの製品を作り出すのに2つの工程を決まった順番で行っているとした場合、製品は1つ目の工程の作業が終わらない限り、2つ目の工程に進むことはできません。 このケースでは、2つ目の工程が1つめの工程に依存していることになります。

統計的変動

統計的変動とは、同じ作業にも時間のばらつきがあるということです。たとえば1つの部品を作るとき、平均すると10分で作れる場合でも、実際にはそれより早くできたり、遅くできたりとばらつきがあります。工場生産の大半の工程は、「依存的事象」である上に、「統計的変動」があるため、徐々に遅れが大きくなってしまうのです。

本書では子供たちの遠足を例に出してありました。
子どもたちが遠足で一列になって山登りをしているところを想像してみてください。子どもたちの体力には個人差があるので、山を登る時間が増えていくにつれ、列の間隔が伸びる箇所があれば、縮む箇所もできるのです。ここにおいての「依存的事象」とは、先頭以外の子どもたちは前の人の登る速さによって自分の登るスピードが決まることを指します。一方の「統計的変動」とは、子どもたちの歩く速度はいつも同じではないことを指します。たとえば後ろを向いて喋っていたり、景色に夢中になっていたり、あるいは前の人から遅れたたために走って追いつこうとしたりと、子供たちのペースは常に一定ではないのです。

 

ボトルネックについて

つながりとばらつきについて理解した工場長はまたまた教授に相談します(3ヵ月しか時間ないのに教授はヒントを出しますが答えは教えてくれません(笑))。ここで工場のリソースを「ボトルネック」「非ボトルネック」に分けなさいと助言します。

ボトルネックとは、皆さん耳にしたことがあると思いますが、大きなボトル(瓶)でも出口が狭いネック(首)になっていると一定時間水の出る量は少なくなります。「ボトルネック」とは、作業や過程などにおいて能力が低く、全体の能力の限界を決めてしまう部分を指します。「ボトルネック」は全体の能力に影響を与える要因となるのです。本書では2つのボトルネックについて述べられおり「ボトルネック」を最大化する2つの方法を紹介しています。

①ボトルネックの時間のムダをあらゆる方法でなくすこと

従業員の休憩時間を工夫して機械が止まらないようにする。他にはすぐ作る必要のない部品は作らないようにする。本書ではロボットを入れた部署が「ボトルネック」だと描かれていました。ロボットを常に稼働させておらず、休憩時間をロボットに合わせるのではなく今までのタイムスケジュールで動いていたため、最大限活用出来ていませんでした。

②ボトルネックの負荷を減らして生産能力を増やすこと

「ボトルネック」となっている工程そのものを他の会社に委託する。以前使っていた機械を再稼働させる。本書では「ボトルネック」となっている工程を委託や古い機械に頼ると部品コストが上がるではないかと反発されますが、「ボトルネック」の1時間当たりの生産能力=工場の生産能力であると教授から諭されます。要は、「ボトルネック」の工程コストが少し上がっても、「ボトルネック」を解消することで全体のコストは減るということです。

 

ドラム・バッファー・ロープとは

工場長は「ボトルネック」解消に動きますが、ここで新たな問題が出てきます。「ボトルネック」解消に動いている工程の在庫がたまっていくのです。ここで工場長は教授にまたまたまた相談します(笑)、ここで教授は「余剰在庫を作っているのは人であると従業員が休まず作り続ける工場は非常に非効率である」と以前の名言を再度伝えます。要は、「非ボトルネック」は余剰能力を超えているから、「ボトルネック」よりも早く需要を満たすことができます。そのため、「ボトルネック」の処理能力を超えて、「非ボトルネック」を休まず働かせていると、その余暇能力で余暇在庫を作ってしまうということです。

 

ここでドラム・バッファー・ロープが出てきます。

本書ではまたまた子供の遠足で例えていました。

ドラム

音楽で使う「ドラム」です。速度を依存する。もっとも歩くのが遅い人(ボトルネック)に合わせて「ドラム」を鳴らし、全体の同期を取ることを意味します。

ロープ

隊列の先頭から最後尾の人まで、一定の長さの「ロープ」を持って進むことで、隊列の長さが広がることを防ぐことを意味します。隊列の人たちを互いに「ロープ」でつないで、「ドラム」の音に合わせることで、依存しなければいけない、歩くのが遅い人の速度に合わせ効率よく進ませる考え方です。

バッファー

また、予測できない速度の変化に対応するために、「ロープ」を少し長くして、最も歩くのが遅い人が前を歩く人にぶつからないようにすることを「バッファー」としています。これにより、最も歩くのが遅い人の速度を、他の人が原因で、遅れさせることを防ぐことができます。

本書の工場では

ドラム

ボトルネックのペースに合わせて鳴らす資材投入の合図

ロープ

合図をしたとしても資材投入が早まってしまうのを防ぐのにつなぐもの

バッファー

納期を守るために全体に持たせるゆとり

本書ではここのシステム作りに尽力していました。

 

 

ボトルネックを解消するための5つのステップ

物語が進むにつれて最初呼んでいた「ボトルネック」は、「制約」という表現の方が適切とされます。そして、制約を高めるために集中して取り組むステップが明らかになります。

ボトルネックを解消する5つのステップ

  1. 制約を見つける
  2. 制約をどう徹底活用するかを決める
  3. 他のすべてをステップ2の決定に従わせる
  4. 制約の能力を高める
  5. ここまでのステップで制約が解消したらステップ1に戻る

 

この5つの集中ステップを繰り返すことで、スループットを向上させ続けることが出来ます。チェーンのように、つながりとバラツキがあるシステムには必ずどこか制約があります。その制約に集中することが全体最適になります。

これが全体最適のマネジメント理論「TOC(制約理論)」であります!!

 

「TOC(制約理論)」の解釈について

今回、勉強したTOC(制約理論)について図でまとめてみました。

ボトルネックは、改善しても次のボトルネックが出てきます。この改善を繰り返していくことが大切です。

まとめ

今回は「ザ・ゴール」についてセミナーレビューを書きました。記載できていませんが、工場が3ヵ月で閉鎖と危機の時に、家庭の危機も訪れるというストーリーもあるので興味ある方はぜひ読んでみてください(笑)……最後はちゃんとリアルと違いハッピーエンドで終わります(笑)