コラム

Column

youtubeと芸能人とブランディング

「好きなことで、生きていく。」

子供の夢物語のようなキャッチコピー
でもそんな夢物語が現実になるのが

「You Tube」

何者でもない若者が一夜にしてスターになる。
ヒカキン、はじめしゃちょー、フィッシャーズ、レペゼン地球など
この数年で芸能人も超える認知を獲得し
膨大な収入を得た若者はたくさんいます。

そんな中、
3年ほど前から芸能人がYou Tubeに本格的に参戦しはじめました。
超有名タレントから無名の芸人まで
有象無象!玉石混交!

まさにYou Tubeは大戦国時代!

そんなカオスなYou Tubeの中で
きちんと自分を分析しPDCAを回しながらブランドを作り上げ成功している人たち。
トップタレントなのに全く再生数が伸びない人。

そんなYou Tubeと芸能人とブランディングをテーマに今日は書いていきたいと思います。

 

 

きっかけはカジサック


芸能人のYou Tube元年は、キングコングの梶原 雄太がはじめた2018年と言われています。
梶原 雄太さんは「はねるのトびら」という番組で一躍人気者になりますが、その後ストレスによる心身症で休養します。

その後、番組も終わり次第にテレビで見ることが減りました。
相方の西野亮廣さんは多才で絵本を作ったり、映画を作ったり、オンラインサロンでとんでもない利益を生み出したりと大成功をしてました。

既存メディアに対する過激な発言も多く、
テレビからは「干された」状態でしたが
SNS,You Tube、オンラインサロンといった独自のファンネットワークやツールを最大限活用しメディアや会社に依存しない形で活動していました。

そんな中、相方の梶原さんは名前をカジサックと変え
「You Tube」をはじめました。

当時You Tubeはタレントの間では
「落ち目の芸能人がやるもの」
「面白くないアマチュアの競技」
みたいな印象があり、芸人がYou Tubeを本気ですることは都落ちを意味しました。

これまでもYou Tubeをはじめる芸能人はいましたが
本気で撮影して編集する有名な芸能人はほとんどいませんでした。

当初、チャンネル登録者数や再生回数は伸びないという声が大多数でした。
落ち目の芸人だし、当時は芸能人よりも売れっ子ユーチューバーのほうが面白いという風潮があったからです。

しかし、チャンネル開設から約半年で100万人の登録者数を獲得
二年も経たずに200万人を突破しトップユーチューバーの仲間入りを果たしました。

そして、収入は一番売れていた頃の10倍近くになったそうです。
現在の再生回数から利益を算出すると年間で8000万~1億円近くらしいです。
You Tubeの場合、既存メディアと構造が違い撮影・編集を自分で行いアップロードすれば
売上=利益です。

カジサックさんくらいの規模になると、編集、撮影、企画構成等のスタッフを抱えていると思いますがその費用を差し引いても何千万もの利益がでます。

カジサックさんがYou Tubeで成功した理由を分析すると
開設当初は後輩芸人だろうがユーチューバーだろうが恥も外聞もなくコラボしまくりました。
プライドの高いタレントであれば「自分自身のブランド」に自信を持っているため
ユーチューバーとのコラボは避けるでしょう。

しかし、このコラボ作戦の影響で早い段階でYou Tubeでの認知を高めることに成功します。
元々、芸人さんは喋りのプロです。
他のユーチューバーとコラボすることでその上手さが強調されることになります。

この「コラボ作戦」はその後芸能人がYou Tubeデビューする際の常套手段になっていきます。

コラボで着実にチャンネル登録を増やし
100万人登録達成しないと解散といったテレビ的な演出も加えながら必死に頑張る姿を発信することで物語として成立させました。

そしてその結果、逆転現象が起きます。
コラボ動画よりも、家族や日常動画といったカジサックを主体とした動画のほうが再生回数が伸びるようになったのです。

そこからカジサックは昔の自分のようなテレビで干されてしまった芸人がYou Tubeをはじめたときにコラボして応援するようになりました。

そういった行動もカジサックのブランド力が上がり続ける要因の一つだと思います。

 

 

そして始まる戦国時代

カジサックのYou Tubeでの大ブレイクは事件でした。
そしてそのカジサックがYou Tubeをはじめることを勧めた芸人がいます。

慶応大学出身、クイズ等で博識で知られる中田敦彦です。

そんな彼に「教育系ユーチューバー」を勧めたと言われています。

その結果、今ではチャンネル登録者数は400万人を超え
サブチャンネルですら50万人超え
オンラインサロンを展開したりと日本のトップユーチューバーになってしまいました。
きっと中田敦彦さんがネタ系や音楽やダンス系のチャンネルを展開していたら泣かず飛ばずだった可能性が高いです。

教育×トーク力という掛け算があのノーカット編集でしゃべくり倒す講義という素人では真似できない動画が生まれヒットした理由でしょう。

そしてどんどん人気芸能人がYou Tubeに参戦します。(登録者数は2021年9月の数です)

霜降り明星 登録者数140万人
チョコレートプラネット 登録者数139万人
かまいたち 登録者数136万人
ジャルジャル 登録者数121万人
狩野英孝 登録者数113万人

そして芸人のみならず俳優やモデルも参戦しはじめます。

You Tube界が衝撃を受けたのが
本田翼のチャンネルです。
https://www.youtube.com/channel/UC8pMBOI9vXf6fIM670vdIPw/videos

開設した一ヶ月後に100万人を超えました。
動画は10前後しかありませんがすべて100万再生超えで半数が500万再生を超えています。
好感度や認知度、ファンとのエンゲージメントが残酷なほど可視化された瞬間だと思いました。

男性だと佐藤健のチャンネルが開設1年弱で200万人を突破しています。

一方で元SMAPの香取慎吾は1年で40万人弱
草彅剛のチャンネルは100万人は超えてますが直近の動画の再生回数は10万回以下がほとんどです。

国民的な認知と強力なファンネットワークが構築されているアイドルでもYou Tubeで活躍しつづけるのは難しいと思います。
テレビの売れ方と、You Tubeでの売れ方の違いがそこに感じられます。

 

 

 

テレビの人気とイコールではない世界


You Tubeの面白いところがテレビの人気とイコールではないところです。

例えば江頭2:50。
一時期めちゃめちゃイケてるといった番組に出演していましたが
過激で下品な芸風で「抱かれたくない男ランキング」でも常に上位でした(今思えばこのランキング自体がどうかなと思いますが)

そんな彼が、You Tubeを始め1年で200万人を超える登録者を獲得するとは誰が想像できたでしょうか?
https://www.youtube.com/c/EGA-CHANNEL1

動画の再生回数のアベレージも非常に高く平均50万再生程度で5本に1本は100~200万回超えのヒット動画があります。

比較対象として元雨上がり決死隊の宮迫さんのチャンネルを見てみましょう。
時期的に江頭さんとほぼ同じ時期に開設されました。
チャンネル登録者数は146万人

直近10本での50万再生超えは3本でその全てはアメトークで放送された雨上がり決死隊解散に関するネタです。

この二人のチャンネルと分析すると面白い傾向が見えてきます。

まず、江頭さんは一見嫌われているように見えますが
それは作られた不好感度だということがわかります。
その証拠に江頭さんの伸びている動画のほとんどがコラボではなく本人を中心とした動画です。


【江頭さんがコラボ以外の動画を投稿した場合】

江頭のドンキ・ルーティン 再生数116万回
https://www.youtube.com/watch?v=Nlwon-RbSQY

江頭56歳、初めてのサイゼリヤ 再生数160万回
https://www.youtube.com/watch?v=QyzYgbFaq54

江頭55歳、初めてのマクドナルド 再生数320万回
https://www.youtube.com/watch?v=fCMffw4qq4k

 

【宮迫さんがコラボ以外の動画を投稿した場合】

宮迫の腕時計コレクションを初公開します!【総額5000万円】 再生数23万回
https://www.youtube.com/watch?v=Kuj4-PNjUMk

【劇的結末】宮迫プロデュースブランドはセレクトショップでも売れるのか検証してみた 再生数14万回
https://www.youtube.com/watch?v=OufXf8v6Pts

宮迫、別荘を買う in鎌倉【戸建てプール付きのオーシャンビュー】 再生数55万回
https://www.youtube.com/watch?v=Gpg18ql2k4E

 

かなり差があります。
認知やテレビでの人気でいうと不祥事があったとはいえ宮迫さんの方が遥かに上ですし
後輩芸人や人気ユーチューバーのバックアップも非常に強力でした

では、なぜ差がついてしまったのでしょう?
まず、自分のキャラクターの把握について差があったと思います。

You Tubeではセレブリティなコンテンツはその「行為」に対して再生回数が伸びることはあっても「人」に対してブランド力が積み重なっていくことは少ないです。

例えば元ZOZOの社長前澤さんのチャンネルでは派手にお金を使った行為に対しては再生数が伸びますが、何かを語ったりする動画は極端に再生数が減ります。
https://www.youtube.com/c/YusakuMaezawaTV/videos

江頭2:50の動画は素人でも真似できそうな企画だったり、一貫して自分をつかって人を楽しませようという気持ちが伝わります。
あれだけ世間から嫌われていた(そう思わされていた)江頭2:50の動画に対して
「元気が出る」「生きる希望がもらえる」といったコメントがコメント欄に並びます。
動画に対するバット評価の少なさもアンチが少ない証拠です。

一方、宮迫さんは人気ユーチューバーと手当り次第コラボしたり
セレブ系コンテンツ、音楽系コンテンツ、ネタ系、ファッション系と統一感がありません。
色んな方向のコンテンツを作成して検証しPDCAを回すならアリとは思いますが
今の所、統一感はありません。

そして、どうしても「成功した芸人がYou Tubeまで降りてきてやった感」が出てしまってる気がします。

江頭2:50は着実に強いファンを獲得したのに対し
「コラボ」や「行為」中心の動画を展開した宮迫さんは固定ファンの獲得が上手くいかなかったと想定できます。

ローランドやGACKTのような元々そういうキャラクターにファンがついている人であれば上から目線でも人気が出るのですが、そうではないキャラクターの人がやれば鼻についてしまいます。

もし江頭2:50がファッション系の動画ばかりあげたり別荘や高級腕時計や高級車の動画ばかりあげたらチャンネルは全く伸びないでしょう。

このへんマーケティングやブランディングのアプローチとよく似ていると思いました。
自社の資源の把握、他社競合の分析、ターゲットの想定、発信する情報を企画する。
分析の結果策定した目標(ブランド)に対して着実に歩をすすめていく。

最後に、意外な方向でブランドを確立した芸能人ユーチューバーを紹介して終わりたいと思います。

 

 

成功してる意外な芸能人ユーチューバーたち

■辻希美(元モーニング娘)
アイドルからママさんタレントへと華麗な転身を遂げた辻希美
現在元モーニング娘の中で一番成功しているといっても過言ではありません。
登録者数は89万人
そして再生回数が非常に多く、10本に1本は100万回再生を超え
平均再生回数も30~50万近く再生されます。
一貫して子育てやママさん向けの動画で強いファンを獲得していると考えられます。https://www.youtube.com/channel/UCNiurMpWExWgio2lqldycbA/videos

■サンシャイン池崎
決して企画が面白いわけじゃないけど、愛されるキャラクターで押し切っている動画が多いです。コラボもほとんどせずサンシャインばかりですがキャラクターにファンがついているのでスマッシュヒットを定期的に飛ばしています。
チャンネル登録者数44万人
https://www.youtube.com/channel/UCDampMTmVkf0D3rCvQP2R7A/videos

■亀田史郎
亀田兄弟全盛のころテレビに出てたお父さん。
亀田史郎さんのチャンネルがここまで伸びるなんて誰が予想しただろう?
当時テレビでは最終的には嫌われ者になってしまったが
実際You Tubeでは怖いけど面白い親戚のおじちゃんみたいなポジションで動画自体も結構面白い。
チャンネル登録者数は52万人と売れっ子芸人並だ。
https://www.youtube.com/channel/UCHGYAdPGQAPAydcmkJ8hiKw/videos

■極楽とんぼ山本
めちゃイケで人気者から不祥事でどん底に突き落とされた山本さん
約10年間テレビから遠ざかっていたそうです。
それからテレビに復帰後も時代は変わり昔のようには活躍できていませんでしたが
You Tubeでじわじわ人気が出始めてます。
初期の動画はまったく再生数が伸びなかったのですが、途中優秀な参謀がついたのか動画の編集からバナーのデザインまでガラッと変わります。チャンネル自体がリブランディングされました。
チャンネル登録者数39万人
https://www.youtube.com/channel/UC24T2Vj2uSukiOwWcpG_9fA/videos

■徳井義実
不祥事で一時期テレビに出れなくて最近しゃべくり007に復帰したチュートリアル徳井さん
その出演に対してネット上でかなり炎上したらしく世間は厳しいなぁと感じましたが
You Tubeでは着実にファンがいます。
登録者数自体は17万人とそこまで多くはありませんが
ほとんど無編集のVLOGのような動画でも10〜30万再生あります。
脱力系の独特な雰囲気があり、今後も伸びそうな気がします。
https://www.youtube.com/channel/UCEInr2OIWVwRDjpl10GpJvw/videos?view=0&sort=p&flow=grid

■バービー
女性お笑い芸人のバービーのチャンネルです。
普段は見た目やキャラクターをイジられて笑いを取る芸風ですが
You Tubeでは一転、美容や整形など女性の気になる問題を身を持って体験したり生々しいレポートをしています。
完全に女性にターゲットを絞っているあたりも伸びる要因ですね。
すごくキレイな女優さんには真似できないポジション取りも上手いと感じました。
https://www.youtube.com/c/barbie0126/videos

 

 

 

 

 

 

You Tubeでは戦略が大事。

一昔前は何者でもない一般人が一攫千金できる印象のあったYou Tube
しかし今や、芸能人のみならずスポーツ選手や格闘家、専門家や様々な企業もYou Tubeに参入しています。

ただ過激で面白いことをしていても再生数が伸びることはありません。
重要なのは「戦略」だと思います。
自分のチャンネルで達成したい目標の明確化
自己の分析と外部環境の調査。
など、動画を撮る前の部分が非常に重要だと感じました。

熊本マーケティング研究所では、そんなYou Tube始めたいけど
どんな動画撮ればいいか分からないよ!って人の相談もどしどし受けますので

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