今回も今月の一冊を書きます、サポーターの薄井です。なぜ今月の一冊を続けて書いているかというと…KMLでは新年度に各自人生設計シートというものを作成します。そこでは短期・中期・長期の目標を定め、それに向けて何に取り組んでいくのかというのを決めます。私はそこで今年度は『知識向上となる書物を4冊読んでコラムに投稿する』という取り組みを掲げました…。なので残り5か月で3冊分書かなきゃ!と焦っているところです(笑)
タイトルを見ただけで、え?そんなことできるの?と気になる今月の一冊。実際に読んでみるとこれは「どうやって商品やサービスに価値を付けて、人に選ばれる存在にするか」を分かりやすく教えてくれる一冊でした。ストーリー仕立てで展開するので、初心者の私でもすっと入ってきて読みやすかったです。今回は10個のストーリーがあるなかで私の気になった3つのストーリーについて書いていきたいと思います。
—【新】100円のコーラを、1000円で売る方法(著・永井孝尚)—
反対派だらけのAirbnbが大成功した理由
Airbnbが広がった背景には、「顧客開発モデル」の発想がありました。従来の「製品開発モデル」では、まず製品を開発してからどう売るかを考えますが、Airbnbは逆に顧客が本当に求めるもの=“ウォンツ”を出発点にしました。つまり『ほしかったけど、ありそうでないモノ』。に耳を傾け、小さく試して改善を繰り返すやり方です。大事なのは、顧客が誰で、その人たちがどんな課題を抱えているのかを見つけることです。Airbnbはここを丁寧に掘り下げながらサービスを磨き、利用者に受け入れられる形へと成長してきました。
チョコザップに”筋トレおじさん”がいない理由
チョコザップの成功の背景には「誰のウォンツに応えるのか」を徹底的に絞ったSTP戦略があります。一般的なジムは、筋トレ器具がずらりと並び、ベンチプレスを何十キロも上げる“筋トレおじさん”の姿が思い浮かびますよね。でも、そうした環境は初心者やライトユーザーにとってはちょっとハードルが高いもの。チョコザップはそこで発想を変え、「本格的に鍛えたい人」ではなく「ちょこっとだけ運動したい人」という超初心者層を狙いました。つまり、セグメントの中でも超初心者にターゲットを定め、その人たちに気軽に行ける“コンビニジム”というポジショニングを打ち出しました。このSTP戦略を実現するためのマーケティング施策を4つに分けて考える4Pも取り入れています。
こうして、「筋トレ上級者のための本格的なジム」ではなく「初心者が安心して通えるジム」という差別化に成功しました。その結果、“筋トレおじさん”はいなくても、ターゲット層から圧倒的な支持を集めることになったのです。
こちらのコラムでSTP分析と4P分析について解説されているのでぜひご覧ください。
≫「STP分析」とは?最適なセグメンテーションとポジショニングの方法を解説
≫4P分析(4C分析)とは?自社商品のベネフィットから販促方法まで分析するフレームワーク
100円のコーラを1000円で売る方法
この章のポイントは『価格戦略』と『サブスク戦略』です。
価格戦略
「100円のコーラを1000円で売る」と聞くと、「そんなの無理でしょ!」と思いますよね。でも本書では、これは単なる価格の話ではなく「価値をどう見せるか」の戦略だと説明されています。例えば、同じコーラでもコンビニで買えば100円。でも、ホテルのラウンジで1000円で出されても「高い!」とは思われません。ここで大事なのは、「顧客がどんな体験を買っているか」です。つまり、コーラそのものではなく、『場所・雰囲気・サービス』という付加価値を一緒に売っているのです。これが価格戦略の本質です。
サブスク戦略
本書ではサブスク戦略を成功させるための3つの【鉄則】が紹介されています。
【鉄則1】・・・顧客に「どうしても使いたい」と思わせる
サブスクを利用する顧客は「これいいな」から次に「安いから入ろう」と考えます。つまり、最初に顧客を惹き付ける圧倒的な価値、そしてその次に始めたくなる安い価格をアピールすることが重要です。
【鉄則2】・・・顧客体験を常に高め続ける
顧客に簡単に解約されないために顧客体験を高め続け、継続してもらうことが重要です。
【鉄則3】・・・収益化して継続する
サブスクは月々の売上が少ないため、利益を出すには「長く使ってくれる顧客」を増やすことが欠かせません。新規顧客を獲得し続け、同時に解約を防止することで顧客数が積み上がり、やがて売り上げコストを超えて黒字化していきます。
このように100円のコーラを1000円で売るという一見あり得ない発想も、「顧客が価値を感じるか」「継続して収益を上げられる仕組みがあるか」で実現できます。価格戦略とサブスク戦略はどちらも「顧客の感じる価値」に根差しているんだなと感じました。
さいごに
「マーケティングとはセリングを不要にすることである」とピーター・ドラッカーが提唱しているように、本書でもそれを感じました。マーケティングとは顧客を理解して価値を届けるための考え方なんだと思います。
・顧客は誰なのか?
・その人が本当に欲しいものは何なのか?
・その価値をどうやって形にして、伝えるのか?
これを考え抜くことが、Airbnbやチョコザップの急成長、コーラの価格戦略やサブスク戦略に繋がっています。本書は、マーケティングの専門用語にふれつつも、事例を通じてとても分かりやすく学べます。マーケティング初心者の方にもおすすめです。興味のある方はぜひ手に取って読んでみてください。仕事や生活の中でも使える考え方が見つかるかもしれません。