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購買意思決定プロセス~お財布の紐が緩むこの季節~

2025年最後のコラム更新です。
年末が近づくと、「今年もよく頑張ったな」「せっかくだから少し贅沢しようかな」と、つい財布のひもが緩んでしまうことはありませんか?クリスマスや年末年始は、セールや限定商品、福袋などが一気に増え、気づけば出費がかさんでいる…という方も多いと思います。私もすぐ自分にご褒美を与えたくなってしまうんですよね…。

でも、こうした行動は決して「意志が弱いから」ではありません。実はこの時期、私たちの購買行動には一定の傾向や判断の偏りが強く表れやすくなっています。今回はその傾向を、人が商品を買うまでの流れを整理した考え方を使って紐解いてみたいと思います。

購買意思決定プロセス


人が商品やサービスを購入するまでには、いくつかの段階があると言われています。それを整理したものが「購買意思決定プロセス」です。この考え方は、フィリップ・コトラーによって体系化されており、人は次の5つの段階を経て商品を購入するとされています。
※コトラーのマーケティングについて全6編でコラムを書いてますのでそちらもぜひチェックしてください👇
コトラーのマーケティング1.0~5.0<1.0編>

①問題認識…自分が欲しいと思っているニーズを認識する段階
②情報探索…ニーズを満たすための解決方法を検索する段階
③代替品評価…自分のニーズを満たすためにはどの商品が合致するのか評価する段階
④購買決定…商品を購買する段階
⑤購買後の行動…商品を買った後、自分が買った商品の良い点を探す段階

私たちは、何かを買うときに無意識のうちにこの流れをたどっています。 年末年始は、このプロセスの各段階にいつも以上に影響が出やすい時期なのかもしれません。

年末年始に強まる購買行動の傾向


①問題認識 【年末年始は特別という気分】
年末年始は、1年を振り返るタイミングでもあります。 「今年は頑張った」「ご褒美がほしい」「お正月くらいは特別なものを」という気持ちが生まれやすく、購買のきっかけ自体が増えます。 この感情の動きが、購買行動のスタート地点を押し上げています。

②情報探索 【目に入る情報が一気に増える】
年末年始は、テレビCMやSNS広告、店頭POPなど、購買を刺激する情報があふれます。 「年末セール」「数量限定」「今だけ」といった言葉を目にする機会も増え、自然と選択肢を探す状態に入りやすくなります。

③代替品評価 【冷静さより“お得そう”が勝つ】
本来であれば、価格や必要性を比較して判断するはずのこの段階。 しかし年末年始は、「福袋だからお得そう」「限定だから今しか買えない」といった印象が先に立ち、冷静な比較が後回しになりがちです。 ここで“お得感”や“特別感”が評価を大きく左右します。

④購買決定 【予定外の出費が増える】
こうした流れの結果、当初は考えていなかった商品まで購入してしまうことがあります。 「まあ年末だし」「今だけだし」と、購買のハードルが下がるのもこの時期の特徴です。

⑤購買後の行動 【満足と後悔が入り混じる】
購入後は、「買ってよかった!」という満足感と同時に、「ちょっと買いすぎたかも…」という気持ちが生まれることも。 これも年末年始ならではの感情の揺れと言えそうです。

今回紹介した「購買意思決定プロセス」は、人が商品を買うまでの思考の流れを大きく捉えた考え方です。この流れの一部を、広告やデジタル施策など企業側の視点で整理したモデルとして有名なのが、AIDMAやAISASです。

AIDMA:マス広告中心の時代に使われてきたモデル
AISAS:検索やSNSなど、デジタル時代の行動を反映したモデル

どちらも購買意思決定プロセスをベースに、「企業がどの段階で、どう関わるか」を考えるためのフレームワークだと言えます。

消費者行動モデルについてはこちらのコラムで詳しく解説しています👇
マーケティングフレームワーク②消費者行動モデル

企業側はこの流れをどう活かしている?


年末年始にセールや限定企画が集中するのは偶然ではありません。企業は、購買意思決定プロセスの中で感情が動きやすいタイミングを意識して、商品やキャンペーンを設計しています。

・年末限定商品
・福袋やセット販売
・期間限定の割引

こうした施策は、「今だからこそ買いたい」という気持ちを後押しする仕組みになっています。

さいごに


年末年始の購買行動をフレームワークで見てみると、「つい買ってしまう」のではなく、「そうなる理由がちゃんとある」ことに気づきます。マーケティングというと難しく感じるかもしれませんが、実は私たち自身の行動の中に、そのヒントがたくさん隠れています。仕掛けを知ることで、「なるほど、だから買っちゃうのか」と少し笑えてくることもありますよね。今年1年頑張った自分へのご褒美に、年末年始くらいはお財布の紐が少し緩んでもいいのかもしれません。