今月の一冊はマンガで分かりやすく学ぶ行動経済学。
日常の中で「気づいたら買っていた」「なんとなく選んでしまった」という経験、ありませんか?
『ヘンテコノミクス』は、そんな“人間らしい判断ミス”をユーモラスに描きながら、私たちの行動の裏にある心理をわかりやすく解説してくれる一冊です。
今回はその中から、印象に残った4つのエピソードを紹介します。
–ヘンテコノミクス(著・佐藤雅彦+菅俊一)—
フレーミング効果-枠組みを変えると価値が変わる
同じ内容でも、言い方を変えるだけで受け取り方が変わる。
たとえば「成功率80%」と「失敗率20%」。数字は同じでも、前者のほうが安心感がありますよね。これがフレーミング効果です。広告や営業の現場ではこの効果が意識的に使われています。たとえば【油分10%カット!】と言われると「体に優しそう」と思って選びたくなりますが、裏を返せば“90%は油分が含まれている”ということ。同じ情報でも伝え方ひとつで印象がまったく変わります。数字や情報を並べるよりも、「どう見せるか」という“フレーム設計”が大きなカギになると感じます。
極端回避性 ― ついつい真ん中を選んでしまう
「高すぎるのは嫌だけど、安すぎるのも不安だから、真ん中にしておこう」そう思ったことはありませんか?
これが極端回避性(または“真ん中効果”)と呼ばれる心理です。
『ヘンテコノミクス』では、3つのランチメニュー(1000円/2000円/4000円)が登場します。
最初は「2000円は高い」と言われていたのに、4000円のランチが追加された途端、「2000円ならちょうどいいかも」と多くの人が選ぶようになりました。人は極端を避け、“無難な中間”を選ぶ傾向があります。この心理を応用すると、売りたい商品を“ちょうど良いポジション”に見せることができます。マーケティングでは、価格設定やプラン設計にこの極端回避性が巧みに使われているのです。
無料による選好の逆転 ― 「タダ」が判断を狂わせる
『2000円以上で駐車料金無料』『3000円以上の購入で送料無料』。
最初は必要なものだけを買うつもりでも、「どうせなら無料にしたい」という気持ちが働き、結果的に出費が増えてしまう。合理的に考えれば損をしているのに、“無料”という言葉を見た瞬間、脳は冷静さを失ってしまうのです。企業はこの心理を巧みに活用し、無料特典を入口にして次の購買につなげています。私たちが“お得”だと思っているその感覚こそ、マーケティング戦略の一部なのかもしれません。
プラセボ効果-信じ込むことで感覚さえも変えてしまう
「高級なラーメンの方が美味しく感じる」「“特製”と書かれているだけで期待してしまう」そんな心理を描いたのがプラセボ効果の話です。ラーメン屋の主人は、同じ味のラーメンを「秘伝のたれ入り」として高値で販売しました。するとお客は「味が良くなった」と感じ、評価も上がったのです。本当は全く同じ商品なのに、“特別感”や“信頼”を演出するだけで、味覚や満足度まで変わってしまう。これはブランド戦略にも通じる話です。マーケティングでは、実際の品質だけでなく、「信じたくなる物語」や「信頼感」をどう作るかが、価値を左右するポイントなのだと思います。
さいごに
『ヘンテコノミクス』を読むと、「人は理屈だけでは動かない」という当たり前の事実に気づかされます。
私たちの選択には、無意識のうちに“心理のクセ”が影響しています。マーケティングはそのクセを悪用することではなく、人の心の仕組みを理解し、より良い体験を設計することが大事なんだなと感じました。
人の行動の裏にある“ヘンテコな心理”を知ることで、より深いマーケティングのヒントが得られる一冊です。興味のある方はぜひ手に取って読んでみてください。マンガなのでとても読みやすくおすすめです!
