経営者にとって、会社・事業を成長させることは永遠のテーマだと思います。しかし、「このままで本当に成長できるのか?」「新しいことに挑戦すべきか?」といった迷いや不安を感じる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、自社の成長戦略を整理し、将来の方向性を見極めるために役立つ「アンゾフの成長マトリクス」というフレームワークをご紹介します。本記事では、4つの成長戦略と、それぞれのリスクや活用のポイントについて解説します。
アンゾフの成長マトリクスとは?
アンゾフの成長マトリクスは、「市場(既存 or 新規)」と「製品(既存 or 新規)」の2軸から成り立ち、企業が採りうる成長戦略を4つに分類します。それぞれの戦略が持つ特徴とリスクを把握し、自社が現在採っている戦略の構成バランスや、今後採りうる戦略を整理することが目的です。
① 市場浸透戦略(既存製品 × 既存市場)
既存の製品を、現在の市場(顧客)でさらに販売していく戦略です。今行っていることの延長線上で、より多く購入してもらうという考え方です。販売促進の強化、リピーターの獲得、シェアの拡大といった取り組みを行います。例えば、シャンプー使用頻度の変化が挙げられます。1930年代は月に2回程度だった使用頻度が、週1回、さらに1980年代には毎日洗う習慣に変化していきました。花王株式会社のシャンプーCMの歴史を振り返ると、市場浸透戦略の流れを見ることができます。
メリット: 比較的低リスクで始めやすく、既存の経営資源を最大限活用できる
リスク : 売上増加には限界があり、競合との価格競争に巻き込まれやすい
② 新規市場開拓戦略(既存製品 × 新規市場)
既存製品を、新たな地域・顧客層・販路に展開していく戦略です。新たな顧客への提案や海外進出、EC市場への参入などが該当します。例えば、味の素株式会社は国内市場での浸透後、海外に同じ商品を展開しています。
メリット: 製品開発コストをかけずに新市場での成長が可能
リスク : 時間やコストが必要な他、市場ニーズを見誤ると失敗の可能性がある
③ 新製品開発戦略(新製品 × 既存市場)
既存の顧客に向けて、新しい製品・サービスを開発する戦略です。リピート顧客のニーズを満たし、単価アップや顧客満足度の向上が期待できます。自社商品で市場を塗りつぶしていくようなアプローチです。例えば、ライオン株式会社は「キシリデント」や「クリニカ」といった歯磨き製品を展開していましたが、新たに「NONIO」という口臭ケアを切り口にした製品を投入しました。これにより、歯磨き市場でのシェア拡大を狙っています。
メリット: 既存顧客との関係性を基盤に、新たな収益源を創出できる
リスク : 商品開発コストがかかり、ニーズをくみ取れていないとヒットしない可能性もある
④ 多角化戦略(新製品 × 新市場)
全く新しい市場に、新しい製品やサービスで参入する戦略です。新規事業や新分野への挑戦が該当します。多角化の代表的な例として、富士フイルム株式会社があります。かつてはカメラ用フィルムのメーカーでしたが、コア技術であるナノ浸透技術を応用し、化粧品「アスタリフト」、サプリメント、さらには医療分野へと進出しました。
メリット: 高成長の可能性があり、新たな売上の柱となる可能性がある
リスク : 莫大な資源と準備が必要で、失敗のリスクも高い
マトリクスは「戦略の選択肢」を可視化するツール
アンゾフの成長マトリクスは、答えを与えるものではありませんが、自社の現状と取りうる戦略を可視化し、経営判断を支援するツールです。成長戦略を検討する際には「シナジー」を意識することが重要です。シナジーが効かない領域で戦略を実行すると、リスクが増大する可能性があります。ここでは、熊本マーケティング研究所の事例を取り上げ、具体的に見ていきましょう。
熊本マーケティング研究所のシナジー
熊本マーケティング研究所では主に次のサービスを展開しています。マーケティング事業(Labout) / 人事サポート事業(InMark) / MAツール事業(BowNow) / 補助金事業 / セミナー事業(Marketing Unique On!) これらの事業は、無秩序に展開されたものではなく、シナジーが効く領域で構成されています。代表的なシナジーに当てはめてみます。
◆販売シナジー
既存の取引相手に追加で別の商品を販売できるということ。営業のコストを抑えることができます。熊本マーケティング研究所では、中小企業の悩みに対してサービスを展開しています。マーケティングによって売上拡大をサポートし、そうして企業が大きくなると人事面での課題が出てくるので人事サポートのサービスを提供したり、そもそもマーケティング施策を実行するためにはお金が必要なので、そのための補助金の情報をお渡しするといった感じです。
◆生産シナジー
イメージしやすいのは工場の既存生産ラインを使用して別の商品を作るといったことです。熊本マーケティング研究所では、マーケティングのナレッジを活用し人事の評価制度や採用活動の設計をサポートするといったサービスや、マーケティングサポートのサービスを転用してMAツール運用サポートを展開しています。
といった具合です。よく聞くシナジーという言葉ですが、他にも投資シナジーや経営シナジーなどいくつか種類が存在しています。こちらも、アンゾフの成長マトリクスとあわせて知っておくことで、どのシナジーを活かせば自社はどんな成長戦略を描けるかを考える材料となります。
まとめ
アンゾフの成長マトリクスは、中小企業にとって「経営の地図」のような存在です。すぐに結論を出すのではなく、複数の選択肢を比較・検討しながら、未来への指針を明確にしていく。そのプロセス自体が、経営の質を高め、成長のチャンスを引き寄せることに繋がります。あなたの会社の未来を描く第一歩として、ぜひこのフレームワークを活用してみてください。また、「自分だけで考えるのが大変!」という方や「新しいことにチャレンジしたいけど取り組み方が分からない!」という方は、熊本マーケティング研究所のマーケターが伴走しながらマーケティングサポートするサービスや、資金面でのサポートをする補助金事業がございますので是非ご活用ください!