コラム

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『NO MUSIC, NO LIFE.』のポスターがデザイン界で語り継がれる理由て知ってる?

『NO MUSIC, NO LIFE.』一度は目にしたことがあるこのキャッチコピー。タワーレコードの広告キャンペーンとして1996年に誕生して以来、単なる音楽の宣伝を超え、文化的なアイコンとなりました。この「NO MUSIC, NO LIFE.」ポスター意見広告シリーズは、音楽そのものを応援することを目的に制作されてきたものです。その背景には多くのアーティストやクリエイターたちの情熱と革新がありました。今回はその誕生秘話、話題性のあったポスター、さらに私自身が衝撃を受けたポスターを通じて、このキャンペーンがなぜデザイン界で語り継がれる存在となったのかを掘り下げます。

 

誕生の背景と制作チームの役割

「NO MUSIC, NO LIFE.」というコピーは、1996年にタワーレコードの広告キャンペーンとして誕生しました。このコピーを考案したのは、博報堂のコピーライターである木村透氏です。木村氏は、音楽が人生に不可欠であるというメッセージをたった一行の言葉に凝縮。この短い一文には、「音楽がなければ人生は無意味だ」という力強いメッセージが込められており、タワーレコードの広告の象徴となっています。

この制作には、タワーレコードの坂本幸隆さんが広告プロデューサーとして携わり、箭内道彦さんがクリエイティブディレクターを務めました。当時箭内さんは電通に所属していましたが、2000年に独立し、「風とロック」というクリエイティブエージェンシーを設立されています。「風とロック」は現在も広告やデザイン、音楽イベントの企画など幅広い分野で活動を続けています。

坂本さんは「音楽が生活の中で特別な価値を持つことを伝えたい」という想いを掲げ、プロジェクトの方向性を決定。一方、箭内さんは「NO MUSIC, NO LIFE.」というコピーを中心に据えたシンプルかつ大胆なデザインで、音楽の普遍的な魅力を表現しました。写真家の平間至さんやその他のクリエイターとのコラボレーションが、ポスターのビジュアル的魅力を支え、タワーレコードの広告を文化的象徴へと押し上げました。

タワーレコードの坂本幸隆さん(写真左)、箭内道彦さん(中央)、写真家の平間至さん(右)

引用元:ブレーン

 

初回ポスター No.1~No.10をご紹介

No.1 山崎まさよし × 竹内鉄郎(1996年)
このプロジェクトの第1弾として制作されたポスターに登場したのは山崎まさよしさんです。竹内鉄郎さんによる自然光を活かした撮影が特徴で、温かみと親密さを感じさせる一枚に仕上がっています。このポスターがキャンペーンの方向性を決定づけ、音楽の普遍的な価値を視覚化するスタイルを確立しました。

引用元:TOWER RECORD

No.2 中村一義 × 中島英樹(1997年)
次に登場したのは中村一義さんとグラフィックデザイナーの中島英樹さんによるコラボレーションです。中島さんの斬新なデザインが中村一義さんの独特な世界観を見事に表現。このポスターは、音楽とアートの融合を象徴する作品として広く知られています。

引用元:TOWER RECORD

No.3 豊川悦司 × 平間至(1997年)
この広告シリーズがスタートした1997年当初、出演者がなかなか見つからず、第3回では写真家の平間さん自らが出演。その後、平間さんの親交があった俳優の豊川悦司さんに直接出演を依頼し、スペシャルコネクションが発動しました。この未知の広告を支えた豊川さんの出演は、シリーズ成功への大きなきっかけとなりました。

引用元:TOWER RECORD

引用元:TOWER RECORD

引用元:TOWER RECORD

No.4 カジヒデキ × HIROMIX(1998年)
渋谷系の旗手、カジヒデキさんを撮影したのは写真家・HIROMIX。ポップで軽やかな雰囲気が特徴の一枚。90年代後半を代表する「渋谷系」のカルチャーを象徴するコラボレーションとして注目を集めました。

引用元:TOWER RECORD

No.5 RHYMESTER × RICO(1998年)
RHYMESTERのメンバーがRICOさんと共に写ったクールなビジュアル。ストリート感あふれる仕上がりが印象的です。日本語ラップの旗手として台頭しつつあったRHYMESTERの存在感をアピールした一枚。ストリートカルチャーと音楽の結びつきを強調しました。

引用元:TOWER RECORD

 

続きまして話題性のあったポスターをご紹介!

 

話題性のあったポスター

「NO MUSIC, NO LIFE.」ポスターは、音楽シーンを超えてカルチャー全体に影響を与える存在となりました。以下は、多様なジャンルで特に話題を呼んだポスターを紹介します。

1. 椎名林檎
椎名林檎さんの妖艶な魅力が際立つポスターは、大きなインパクトを与えました。彼女独特の世界観が、音楽への情熱を強く印象付けます。

引用元:TOWER RECORD

2. くるり
くるりのメンバーが楽器を演奏する姿は、音楽の楽しさをストレートに表現しています。彼らの軽快な音楽と相まって、多くの人を笑顔にしたポスターです。

引用元:TOWER RECORD

3. スピッツ
スピッツの温かい雰囲気が伝わるポスターは、聴く人の心に寄り添います。彼らの音楽が、多くの人の青春時代を彩ってきたことを象徴するような一枚です。

引用元:TOWER RECORD

4. 小沢健二
小沢健二さんの知的でスタイリッシュな雰囲気が、ポスターに奥行きを与えています。彼の音楽は、世代を超えて愛され続けています。

引用元:TOWER RECORD

5. 斉藤和義
斉藤和義さんの飾らない笑顔が印象的なポスターは、彼の音楽の持つ親しみやすさを伝えます。彼の楽曲は、多くの人々に共感と勇気を与えてきました。

引用元:TOWER RECORD

6.チバユウスケ × 山中さわお
ロックシーンを代表する二人の熱いコラボレーションThe Birthdayのチバユウスケさんと、the pillowsの山中さわおさんによる「NO MUSIC, NO LIFE.」ポスターは、日本のロックシーンを代表する二人のアーティストの熱いコラボレーションとして大きな話題となりました。

引用元:NO MUSIC, NO LIFE.

7.坂本龍一
音楽の世界を切り拓き続けた坂本龍一さんが登場する『NO MUSIC, NO LIFE.』のポスター。
静かな情熱と深い音楽愛が伝わります。

引用元:NO MUSIC, NO LIFE.

8.Mr.Children
真剣な表情で楽器を演奏する姿が印象的。彼らの音楽に対する情熱が伝わってきます。

引用元:NO MUSIC, NO LIFE.

9.矢沢永吉、ザ・クロマニヨンズ、怒髪天、The Birthday、ギターウルフ、マキシマム ザ ホルモン
豪華すぎるロックレジェンドたちが集結した『NO MUSIC, NO LIFE.』ポスター。音楽の熱と魂が一枚に刻まれた圧巻のビジュアル。

引用元:TOWER RECORD

10.電気グルーヴ
唯一無二の存在感と音楽への愛を、ユーモアとスタイルで表現した一枚。

引用元:TOWER RECORD

11.熊本県と宇多田ヒカル
2014年、タワーレコードは熊本県のキャラクター「くまモン」と宇多田ヒカルをコラボさせたポスターを制作しました。デザイナーの水野学氏が手掛けたこのポスターは、くまモンが宇多田ヒカルの楽曲「ぼくはくま」の歌詞を口ずさむというユニークなデザインで、大きな話題となりました。音楽と地域、そしてキャラクターが見事に融合した、まさに異色のコラボと言えるでしょう。

引用元:NO MUSIC, NO LIFE.

12.NUMBER GIRL
NUMBER GIRLのポスターには、バンドメンバーそれぞれの言葉が添えられており、音楽に対する熱い想いや、自分たちの音楽が持つ意味が語られていました。これらの言葉は、多くのリスナーに共感と勇気を与え、彼らの音楽への理解を深めました。

引用元:NO MUSIC, NO LIFE.

13.ダウンタウン
2014年、タワーレコード渋谷店のリニューアルオープンを記念して、お笑いコンビのダウンタウンが「NO MUSIC, NO LIFE.」ポスターに登場しました。ミュージシャン以外の著名人がポスターに登場するのは異例のことでしたが、ダウンタウンの圧倒的な人気と、音楽に対する深い愛情が伝わってくるポスターは大きな話題となりました。

引用元:お笑いナタリー

14.樹木希林、ハナレグミ
樹木希林さんが登場した「NO MUSIC, NO LIFE.」ポスターは、映画『海よりもまだ深く』の公開に合わせて制作されました。このポスターでは、樹木希林さんと映画の主題歌を担当したハナレグミが共演しています。

引用元:NO MUSIC, NO LIFE.

15.Vaundy
彼のクールなビジュアルと、彼の音楽に対する熱い想いが伝わってくるようなデザインでした。ポスターには、彼の楽曲の歌詞の一部や、音楽に対する彼の言葉が添えられており、ファンにとっては貴重なアイテムとなりました。

引用元:NO MUSIC, NO LIFE.

16.WACK所属アイドルグループ
アイドルグループの育成とマネジメントを行うWACK所属のアイドルグループは、一斉に「NO MUSIC, NO LIFE.」ポスターに登場したことがあります。アイドルという若く勢いのある存在が、音楽業界のベテランたちと同じ舞台に立つことで、音楽シーンの未来を感じさせるようなインパクトを与えました。

引用元:NO MUSIC, NO LIFE.

17.矢沢永吉
2009年6月、タワーレコードの「NO MUSIC, NO LIFE.」ポスターに登場した矢沢永吉さんは、ロック魂あふれる表情で「本気で遊んで、楽しんで、みんなを熱くさせたい。」と語りかけ、音楽への熱い情熱を伝えています。

引用元:TOWER RECORD

私自身が心に残ったものを少し紹介します。

GOING STEADY & 森三中
2001年、ロックバンド・GOING STEADYと人気お笑いコンビ・森三中が共演したタワーレコードの「NO MUSIC, NO LIFE.」ポスター。若者を中心に大きな話題となり、音楽と笑いの融合が印象的な一枚です。本当にこんな高校生がいそうな自然な雰囲気と黒澤さんが欠席者扱いなのが面白いですね。

引用元:NO MUSIC, NO LIFE.

チバユウスケ
昨年4月に食道がんを公表し、活動を休止していたが、同年11月26日に55歳でこの世を去ったチバユウスケさん。ポスターに登場するのは11年ぶりです。「I SAW THE LIGHT」の歌詞より、「光を見つけた 光をつかんだ」という一節が引用されています。写真はフォトグラファーの新保勇樹が撮影したライブ写真が使われ、新保勇樹は、長年チバユウスケ、The Birthdayを撮り続けてきた写真家で、チバユウスケを最も近くで見てきた一人です。

引用元:NO MUSIC, NO LIFE.

のん
2017年8月、女優のんさんと現代美術家・奈良美智さんの作品がコラボレーションしました。今回の撮影は、のんが尊敬する現代芸術家、奈良美智さんが愛知・豊田市美術館で開催中の個展『奈良美智 for better or worse Works:1987-2017』の会場内で行われました。「NO MUSIC, NO LIFE?」ポスターに、奈良美智さんの作品が登場するのはなんと今回が初。さらにポスターに登場する作品「ブランキー」は、奈良美智さんご本人にセレクトしていただくという、大変貴重なポスター撮影となりました。

引用元:NO MUSIC, NO LIFE.

グループ魂
2006年12月、タワーレコードの意見広告シリーズ「NO MUSIC, NO LIFE.」に、個性派ロックバンド「グループ魂」が登場しました。グループ魂は、独特のユーモアと鋭い社会風刺を織り交ぜた楽曲で知られるバンドで、その活動は音楽だけにとどまらず、メンバーの俳優やタレントと、脚本家としての顔も広く認知されています。このポスターでは、彼らの型破りなスタイルと音楽への熱い情熱が見事に表現されており、見る者を圧倒する存在感を放っています。

引用元:NO MUSIC, NO LIFE.

 

ポスターのデザインとその魅力

「NO MUSIC, NO LIFE.」のポスターは、黄色と赤が生む視覚的インパクトが特長です。この配色は心理的にも非常に目を引きやすく、人々の記憶に残る効果があります。また、平間至さんの写真がアーティストの個性を最大限に引き出し、坂本幸隆さん、箭内道彦さんによるメッセージ性が組み合わさることで、視覚的な美しさだけでなく、見る人に深い感動を与えています。

シンプルながらも強烈な配色、芸術性の高い写真、そして普遍的なメッセージ。この三位一体のデザインが「NO MUSIC, NO LIFE.」のポスターを単なる広告以上の存在に押し上げた理由です。

 

デザイン界で語り継がれる理由

「NO MUSIC, NO LIFE.」のポスターがデザイン界で語り継がれる理由は、その普遍性と多様性にあります。シンプルなコピーが持つ力、アーティストの個性を引き出す写真、そして音楽とカルチャーを結びつけるビジュアルデザイン。それらが融合することで、このポスターは単なる広告を超え、時代の象徴となったのです。

「NO MUSIC, NO LIFE.」は、音楽を愛するすべての人に向けたメッセージであると同時に、デザイン界でも語り継がれる名作です。次にこのポスターを目にしたときには、その背後にあるメッセージや背景に思いを馳せてみてください。それは、音楽の力を再確認するきっかけになるかもしれません。

Webサイトでは、これまでのポスターをすべて見ることができます。アーカイブを見て楽しんでください。

NO MUSIC, NO LIFE.ポスターアーカイブ

https://nomusicnolife.jp/poster_archive/